医療法人 ホクレア

建築・施設コンセプト

― 福島直院長が語る、建築家 中谷俊治さんとの出会い ―

実践したい医療、保養(癒し)、フィットネス、介護。これらをどうやって提供していこうか?どんな箱にぎゅっと詰め込もうか。 ビル開業では到底無理だ。ソフトも大事だけど、ハードも大事だ。どのくらいのスケール、デザイン、空間がいいのか?開業できれば安普請でもなんでもいいってものじゃない。出張手術の移動途中に入った珈琲店。雑誌で開いたページで、直感、イメージが湧きました。

“自由が丘の家(中谷俊治)”
『なんかいいな。こんな空間、雰囲気で、リハビリや診療が行えたら』

有名な、本州の建築家さんなら返事が来ない可能性が高いかな、まあ駄目もとで、メールしてみよう。 ちょうど他のプロジェクトが終わったばかりのタイミングだったとはいえ、すばやい丁寧なお返事を頂き、 すぐに札幌で会って、クリニックへの思いを伝えて、フィーリングがあって、迷わず中谷さんにお願いしました。

― 建築家 中谷俊治さんのねらい(ホームページより転載) ―

札幌 F Clinicは札幌市南区中ノ沢1丁目に建設予定の整形外科のクリニックである。 この施設の特徴は通常の整形外科治療だけでなく、カラダ全体のヒーリングを目的としている。 それは同時にココロの治療も意味する。体が痛んだときは、誰もが不安の念にさいなまれる。 この施設に救いを求めてやってくる患者を、心身ともに救済することが、この施設に求められている。

一方、もうひとつの柱となるのが学生からプロにいたるまでのスポーツ選手を対象とした治療である。 各競技に固有の関節、筋肉の動かし方から発生する痛みを治療し、医学的な立場から正しいフォームも指導する。そのため、実際にボールを投げたり、バットを振ったりするスペースを併設しているのも、この施設の特徴となっている。 今までの整形外科、リハビリ科のクリニック、スポーツジム、スポーツセンター、あるいは高齢者のリハビリを対象とした施設は、 どれもが判で押したような内装、雰囲気があり、それらはヒーリング空間とはほど遠い。ヨーロッパの教会や京都の古寺に足を踏み入れたときのように、 心身に透明感を感じるものとしたい、というのが建築設計におけるテーマである。

そのため、防球ネットに関しても校庭やバッティングセンターのような様であってはならない。花嫁のベールのように、建物を柔らかく優しく包み込むものでなければならない。
南面いっぱいに設けられた開口部はガラスブロックである。これは断熱性能にくわえ、その外にあるフィールド・アスレチックでキャッチボールなどをしたとき、 ボールが当たっても割れないようにとの配慮からである。ただし、これだけでは札幌の寒さに対し十分ではないため、内部側にもう一枚ガラススクリーンを設けている。 このガラススクリーンには乳白色の飛散防止フィルムが貼られているため、ガラスブロックを通した光がカゲロウのように映りこむ。 その様は時のうつろいとともに、あるいは雲の動きを感じさせるものとなるだろう。

実はここに設計のねらいがある。健康な体を維持する、健康な状態にもどるということは、自らの体の変化に気づき、その微妙な声を聞き取るという行為といえる。
普段は気にもかけないその変化こそ、もっとも大事なものである。私たちのまわりをとりまく光、空気。そうしたものにフィルターをかけ、増幅することで、その存在に気づき、耳を傾けようとする。 この空間で実現される、この光の装置、デバイスが自分自身の体に対する気づきへとつながることを期待している。

一級建築士事務所(有)中谷俊治ステューディオ
東京都港区南青山4-16-10-202
ホームページ

Profile
1964年 大阪府生まれ
1988年 京都大学工学部建築学科卒業
1988年~1998年 
原広司+アトリエ・ファイ建築研究所 勤務
梅田スカイビル 設計・現場監理担当 設計室長
JR京都駅ビル 設計・現場監理担当 設計室長
札幌ドーム 設計担当
1998年~2000年
イギリス ロンドンに居をかまえ、そこからヨーロッパ各国、アメリカ、インド、エジプトなどの都市、建築をめぐる
2000年 一級建築士事務所(有)中谷俊治ステューディオ設立 現在に至る

代表作品
fクリニックさっぽろ
神楽坂RAKUZANビル
自由ヶ丘の家


著書「アーキトラベル 建築をめぐる旅」 (TOTO出版 2002年)